さて、昔むか〜し、私がまだ若かった頃の話しです。その頃私は都内の中小企業に転職したばかりで、中途入社1年目でした。その年のクリスマスに社長のコネで都内の某有名老舗ホテルのクリスマスディナーのチケットを頂き仲の良かった同僚達と訪れたのです。
私は田舎者だったのでその有名ホテルを知らなかったのですが、こじんまりとしながらも歴史を感じる風情がありとても落ち着いた素敵なホテルでした。
世間知らずだった事もあり何も分からずにそこに皆と座っていたのですが、流石老舗と言うのかホテルのレストランの中は照明が落とされキャンドルライトが点り大人のクリスマスの雰囲気が漂う中次々とゴージャスで食べた事の無い料理が運ばれ私は緊張しつつも舌鼓を打ちました。そして気の利く同僚の一人がこれまた呑んだ事の無いような美味しい赤ワインを「社長のおごりだよ」と頼んでくれて、皆で乾杯したのです。
赤ワインってこんな美味しいんだ。
若い頃はザルと言われめっぽう酒に強く、普段は居酒屋で「まず生中」とか言っていた私はびっくりしました。
社長、ありがとうございます。
めちゃくちゃ良いクリスマスでした。
(今思えば。)
帰りは本当にほろ酔いで、
「佳い酒は酔い方も違うんだなー。」
なんて鼻歌交じりで千鳥足でした。
「ヒャハハ、佳い酒呑んだー♪」
と、人生最高のご機嫌でレストランを後にしようとした時です。出口付近にクリスマスイベントでくじ引き大会が行われていました。皆も引いた様でしたが、当たりません。
「ヒャハハ、こんな旨い酒呑んだの初めてだよ〜ん。私、今サイコーの気分で〜す♪」
「どうぞ、くじ引いて下さい。」
「ん〜?これかな?」
ゴソゴソと箱に手を突っ込む。
私、こういうの分かっちゃうんだよねー、
特に今、サイコーに気分良いじゃん?
あんなに神経が研ぎ澄まされてインスピレーションが閃いた事は無い。
「これだ!!ジャ〜ン!!」
本当に当たりました。
「おめでとう御座います!!
ペアディナーチケットご当選!!」
ホテルマンが当選のベルをガランガランと鳴らしてくれました。
今思えば、その後の自分の運命なぞまだ知らない若かりし日。
だからこそ、だったのかあんなにインスピレーションが閃いたお酒はありませんでした。
今はすっかり向精神薬(抗精神薬?)の影響を受けてしまい感情が平坦で冷たい気がします。笑ったり怒ったりする場面では意識していないと無表情になっていたりするんじゃないかと思っています。たまに、世界の終わりでも無表情で居るんじゃ無いかと心配になる。
私の場合、寝不足と怠薬と怒りの感情、あと女性ホルモンのバランスと貧血が統合失調症の陽性反応を引き起こす様です。
でも、あの時の様な美味しい酒を飲んで最高にご機嫌になれたら宝くじが当たるんじゃないかしら?
なんて、そうはならないところが
「世の中上手く出来ているなあ…。」
と、思わずにはいられない。